「君の膵臓をたべたい」住野よる
評判になっていたし、生徒の一人がお気に入りだと言ってたのにも関わらず、ようやく読んだ。
とても良く出来た青春小説だ。主人公の一人が病気で亡くなるというのはありがちな「泣かせ」の手法だけれど、それ以外に工夫がされていた。語り手の氏名が最後の方まで明らかにされないのもその一つだ。彼の名前が重要な伏線にもなっている。そして彼の人物設定も。これも実はありがち、人とあまり関わり合いになりたくない読書好き。しかしそれと病死を組み合わせたのも新機軸だと思える。この本を読む人々も実際「人とあまり関わり合いになりたくない読書好き」だろう。私も高校に入るまではそうだったし、高校に入ってからも一部の人達としか触れ合わなかった。その彼の成長の仕方が丁寧に描かれているところが良かった。
ただキャッチコピーの「読後、きっとこのタイトルに涙する。」というのはどうかと思う。もっと前にこのタイトルに涙するからだ。
文學界2018年3月号
「大特集:岡崎京子は不滅である」
とある。文學界がこういうことをやるのは珍しい。岡崎京子というのは、「へルター・スケルター」や「リバーズエッジ」といった作品を書いたマンガ家である。その「リバーズエッジ」が今回映画化されたのを受けての特集であろう。
ということで「リバーズエッジ」をまずは読み返した。いわゆる「イタイ」80年代の青春モノ。倉多江美をもっと突き抜けた感じの作風。
私は一時期夢中になって岡崎京子を読んだ。それがある日突然消えてしまった。あとで「交通事故」とわかった。いまも車椅子生活らしいが、マンガは書かなくても明るく生きているらしいのでよかった。
「あきない世傅 金と銀 五 転流篇」髙田 郁
時代小説なんだが、思想は現代的である。女名前禁止の大坂で、ひとりの女性が商人として、社会人として成長していく様を描いている。
第五巻にしてようやく明確な進展が見られる。何巻まで続くのかな。10巻くらいか。楽しみだ。
「ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所」髙田 郁
「全体論的」とはなんのことかよくわからないが、要は目くらましで、恐ろしく頭の切れるオタク的探偵が、謎を解く話である。
といっても「銀河ヒッチハイクガイド」の作者のことであるから、まっとうなミステリではない。幽霊も現れるし、SF的ガジェットも現れる。
それでも妙に納得できるところがおかしい。「電動伝道師」なんてなぜ登場してきたのかわからなかったけれど、最後の方になると愛着が沸いてくるしね。
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